漢方で夕張再生に一役(2010年04月07日)

■ツムラ社長 芳井順一さん(62)

地鎮祭であいさつするツムラの芳井順一社長地鎮祭であいさつするツムラの芳井順一社長=夕張市生薬工場を着工したツムラ社長芳井順一さん

山間で冷涼な夕張は漢方の薬草栽培に向いているのではないか。生薬施設を建設すれば疲弊した過疎地への支援になるかもしれない――。そんな構想を温めて5年。市内のメロン畑の跡地約3万平方メートルを確保し、6日、加工場兼保管倉庫の着工にこぎつけた。

 「財政破綻(はたん)した市にリスク覚悟でなぜ進出するのか?」「雪の多い気候条件など、本当に栽培に向くのか?」。社内の反対論や慎重論を説得すべく、ひそかに現地を調査し、昨年7月には試験栽培にも成功して最終決定した。

「近くには障害者施設もある。ツムラは人にやさしい企業、社会の役に立てる企業をめざしている」。この日の安全祈願祭ではあいさつの時間を延長して、人材確保のためにこそ障害者を国の基準を大きく上回って雇用している経緯を説明。「新工場もバリアフリーは当然。ベルトコンベヤーも車いすの高さにし、地域の障害者を含め200人の雇用をめざす」と強調した。


 創業家と血縁のない初の社長として、4年前に入浴剤などを扱う家庭用品事業を分社・譲渡して漢方に特化、倒産寸前の会社の立て直しに辣腕(らつわん)をふるった。医学界から政界まで、漢方の重要性を訴えて自ら足を運ぶ。その苦労と自信がいまを支えている。
夕張ツムラの建物

朝日新聞 北海道 My Town (by 本田雅和さん)