芳井順一社長Interview Junichi Yoshii
私が営業担当役員に就いた1997年当時、営業の仕組みに大いなる問題があると感じた。
まず新たな得意先を広げていく必要性があった。そして、漢方医学を国の伝統医学として認めてもらう働きかけも必要だった。
後者の第一歩として、2001年にコア・カリキュラムに「和漢薬を概説できる」という指針が入ったのは大きかった。
大学への働きかけや、漢方薬に興味を持った医師向けのセミナーを地道に実施することなどで漢方医学が根づいていけば、売り上げは自然とついてくる。
実際、平均的な実売量の伸び率は3年前までが7%、直近では9%に達している。これで営業戦略の手応えは得たが、一方で生薬の生産が足りなくなると気づいた。生薬の生産は長いもので7年かかる。また保管はセ氏15度・湿度60%以下といった条件が揃わねばならないなど、対応は一朝一夕にできない。このため、需要予測に基づいた生薬確保の計画を社内全体で共有しようと「漢方10年ビジョンプロジェクト」を立ち上げた。今では、使用している全118種の生薬の調達経路や使用農薬の状況まで把握できている。だが、漢方薬の需要がさらに伸びた場合への備えなど、社内の問題意識は十分とはいえない。
漢方薬は重篤な副作用も発生しうるので、市販薬としてテレビCMで大々的に打ち出して売るような薬剤ではない。ラインナップとして市販薬を持ってはおくが、拡大するつもりはない。
漢方以外の新薬開発は、社長に就いた年にやめることを決めた。
魅力ある新薬候補がなかったためだ。研究員は漢方薬の作用メカニズムの解明に集中している。
誰もが社長になるチャンスがあるということ。私は47歳でツムラに来て、凝縮した約15年間を過ごした。社長の定年を70歳から65歳に引き下げたので、あと1年半で次期社長に引き継ぐ。後継者の目星はすでにつけた。
会長の定年も75歳から70歳に引き下げた。(社長を退いた後は)代表権を持たない会長として5年間、次の社長のサポートに徹すつもりだ。官庁や政治関連、中国との関係強化や、業界活動などを手がけたいと考えている。ツムラの最終目標である「27万人の医師全員に漢方医学を学んでいただく」ことを目指す。漢方医学が根づけば、将来のイメージとして、医療用医薬品の数量べースで3割、売上高にして5000億円程度まで伸ばせるだろう。 (談)
社員